凪いだ青を待ってる
言葉を紡ぎかけたわたしに
青葉先輩の凛とした声が被せられる。
――…さっきまでの困惑が微塵も無くなったような、澄んだ目で。
「県大会まで2か月もないけど」
「…、はい」
「必ず糸島大付属を倒して、全国決めるから。…そしたら」
「はい」
「その時、ちさきに伝えたいことがあるんだ」
穏やかながら、どこまでも真っ直ぐで
それでいて爽やかな、天気の良い日の凪いだ海のような声だと思った。
「今じゃなくてですか…?」
「今じゃダメなの。全国決めてからじゃないと、意味がない」
「えー…」
「えーじゃない。反抗期め」
「い、いひゃいれすひぇんぱい…」
「ははっ!」
「…ふふっ、もう…」
その日、ふたりで笑い合った時間は
わたしにとって何よりも特別なもので。
――…これからも、この凪いだ海のような青を
そばで見ていたいと、見ていられると、思っていた。
当たり前に、思ってた。