凪いだ青を待ってる
「青葉、その言い方はないだろー?」
――…理央先輩が慌ててなだめても、彼がその無表情を変えることはなくて。
…左膝は毛布で覆われて隠れていたから、今どうなっているのかは分からないけれど
傍にある車椅子に、彼の怪我の具合と現実を見た気がした。
――…プルルルッ
「やっべ、俺マナーモード……」
「理央先輩、電話出てきていいですよ」
「ごめん。青葉、あとでまた」
理央先輩に電話が来たようで彼が退室し、青葉先輩とふたりになる。
そこでわたしはようやく、青葉先輩の顔をしっかり見ることができて。
「青葉先輩、あの…驚かせてごめんなさい」
「………」
「きっと先輩なら復帰に向けて頑張ってるよねってみんなで話してて、それで――…」
「俺が復帰するのはありえないって聞いたんだろ?」
――…こわい
「っでも、青葉先輩は必ず這い上がる人だから。だから――…」
「…俺の何が分かる?たった一年部活が同じだっただけ。そんなお前に、俺の何が分かるんだ」
――…こわい。
「っわたしは!理央先輩や隼人先輩ほどじゃないけど、青葉先輩を見てきました。大好きな青葉先輩のことを見てきたからこそ、心からそう思うんです…!」
足が震えて、恐怖から声も震えて、涙が出そうになる。
…知らない。こんな嫌悪にまみれた目をする青葉先輩を、わたしは知らない…っ。