音のない君への告白
俺、音無奏(おとなしかなで)がいつ感情を失ったのかはわからない。ただ、歳を重ねるごとに人と関わることを嫌い、孤独を貫くようになった。どんな感動する物語でも、冷めた目でしか見れなくなった。

いつからこうなったんだろう?

保育園に通っていた時、いつもニコニコしていて大好きだった先生が後輩の保育士をいじめているところを目撃した時?俺の前では仲の良い夫婦を演じていた両親が、互いに不倫をして離婚することになった時?中学の時にクラスメートが自分の友達を裏切っているところを見た時?思い当たることが多すぎて、逆にわからない。

とにかく、小さなことが積りに積もって俺はこんな人間になった。無愛想で冷たい。まるで氷のような人間にーーー。

「音無くんと一緒のクラスだ!!」

高校二年の春、当然クラス替えがある。どうでもいい。あくびをする俺の耳に、女子たちの耳障りな高い声が聞こえてきた。

「ええ〜……。でも、音無くんって冷たくない?人と関わろうとしないし……」
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