華麗なる人生に暗雲はつきもの
そんな脳内での自問自答すること十秒間。
言葉がようやく出た。
「俺も行く!明日、俺も一緒に病院行くからな!」
問いたいことなんて何もない、言いたいことしかない。
「大丈夫だよ。別に一人で。会社休めないでしょ?」
「いや、大いに暇だ。暇すぎて休もうと思っていたくらいなんだ」
朝一で会社に電話を入れて、休むと言えば済む話。
俺の仕事なんてどうでもいい。
いつも以上に俺は慎重に丁寧に水野の背中を撫でた。
具合が悪いとは言っていたが妊娠とはまったく思ってもいなかった。
毎日辛そうでもなかったし、食欲もあったし。
水野が安心して眠りにつくまで俺はずっと背中を撫で続けて、頭の中で色々考えを巡らそうとしたが、一つの感情に支配されて何も考えることはできなかった。
結局、そのままうとうと夢の中に入り込み迎えた朝。
会社に電話を入れると、出て来いという非情な言葉。
確かに俺が仕切る会議が入っているのはわかる。
だが、しかし……
早く帰って彼女に癒してもらえと、毎日言う課長ならば一日くらい休みを貰えるかと思ったのだが。