華麗なる人生に暗雲はつきもの
「明美の大学時代の先輩が連絡を取ってくれたのよ。何でも水野さんの家族同然らしいじゃない」
何度も説得を試みても会ってくれさえしなかったのに。
仁の言葉には耳を貸すわけか。
結局、仁の力を借りてしまったわけだ。
仁の世話になるつもりはない、なんて大口を叩くことはできず、俺は押し黙まった。
「水野さんのご両親は結婚に反対らしいじゃないか。お前みたいなのと結婚させたいなんて思う親なんていない」
陰険で相手にすることが苦痛だ。
意識しないと舌打ちしてしまう。
「あんたらが来る必要なんてない」
「馬鹿な子ね。産んだ親の顔を見てみたいと思われているのよ。どんな教育をしているのか、ってね」
「………………」
「お前の教育をどこから間違えたのか」
「まったくね」
お袋のため息が張り詰めた空気を奇妙な諦めの空気に変えた。
仁やら親が出る事態になるとは本当に情けない。