華麗なる人生に暗雲はつきもの





「しかし、あんたも大変ね。相変わらず、小春に振り回されて」



 上原のやつ、徹底的に俺をいたぶるつもりだな。


 この間の腹いせか。



「そうだっ!小春ちゃんは浮気だと思ってる!早く訂正しろよ」



「広也君。小春ちゃんは浮気だとは思ってないよ」



「榊田が自分にぞっこんなのを知ってるからね、小春は。だからこそ、榊田にとっては最悪なのよねぇ~」



 俺が浮気をしないのは、上原の言うように水野以外の女に魅力を感じないから。


 だが、水野は俺が浮気しないのは俺が誠実な人間だと思っているからで。


 誠実だと思われているのは良いことだが、今回ばかりは誠実さを疑ってくれていたほうが良かった。


 馬鹿広也が言うように浮気だと思って避けているのならば良かったのに。


 誤解を解いて、さっさと結婚という安易なストーリーにはならないところが、水野に惚れた俺の宿命だ。



「朔も小夜ちゃんも、もったいぶらずに教えてよ。浮気を疑ってないなら、何で小春ちゃんは俊を避けるんだ?」



「つまり、小春ちゃんは、榊田君がエンゲージリングを購入することがわかったわけ」



「そう。つまり、プロポーズされることを恐れて、小春は榊田を避けてるってこと!そうよね~。榊田~?」



 この店の食べ物全部完食してやる。


 もうヤケだ。


 プロポーズする前から、振られるなんて前代未聞だ。



< 54 / 216 >

この作品をシェア

pagetop