華麗なる人生に暗雲はつきもの
「……この間、言ったはずだ。結婚したからといって、何も制約したりしない。何でも自由にすれば良い。主夫になれって言うならなるし、稼いで来いって言うならそうする。何でも水野の言う通りにする」
こんなことを言っても無意味なのはわかっているのに、どうしても口から言葉が溢れる。
それは、どうしても諦められなくて、何とか考えを改めて欲しくて、少しの希望に縋るように出される惨めな言葉。
格好悪いことこの上ないセリフなのに、そんなことは構わなくて、何としてでも繋ぎ止めたかった。
「私は愛のない結婚をするつもりはない。だから、ごめんなさい」
愛のない結婚。
それを聞いた瞬間、グラスの中身をぶちまけたい衝動に駆られた。
侮蔑の視線を向けるが、それをまっすぐに受け止める水野。
俺のこの感情を全て、受け止める覚悟をしている目だ。
むしろ、さっきから俺に感情を露わにさせようと、わざと怒らせるような言い方をしている。