『異世界に転移したので、モフモフたちにごはんを作ります!』番外編SS 黒豹のヴォラット視点
 俺が王都警備隊を希望したのには理由がある。
 実は俺は、幼馴染みであるスカイヴェン国の第一王子であり、警備隊の隊長であるルディこと、カルディフェン・ラーダ・スカイヴェン殿下の非公式なお目付役なのだ。

 今は一端(いっぱし)の騎士の顔をしている俺たちだが、幼い頃にはかなりの腕白坊主だった。ルディとは、獣化して外を転げ回って遊び、時には取っ組み合いの喧嘩もした仲なのだ。
 王宮の植え込みに突っ込んで突き進む遊びをして庭園を滅茶苦茶にし、その時にはまだ現役の国王陛下であった『ギルバートじいさん』に「いい加減にしろ!」と盛大な雷を落とされ襟首を掴まれて、そのまま池に放り込まれたというのは良い思い出だ。
 ちなみに、池で飼われていた大きな魚はまずかったし、そのあとルディと一緒に腹を壊したので、俺たちは二度と生魚を食わないことにしている。
 その他にも、元気なじいさんには高い塔のてっぺんにくくりつけられたり、ロープでぐるぐる巻きにされて馬小屋に放り込まれたり、いろいろな教育的な指導を受けた。

 しかし、それは子ども時代のこと。
 立派な王都警備隊員である俺は、現在は引退して前国王陛下となったギルバートじいさんに、恨みを持ってはいない。
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