こぼれ落ちる砂時計
朝起きて見える景色はずっと変わらない。
無機質な天井。
少し左に目を向けると小窓から覗く真っ青な空。
どれくらいだろか、雲一つない空をぼおっと眺めていると、不意に声が聞こえる。
「おはよう」
右に視線を移すと、椅子に腰かけたお兄ちゃんの姿があった。
はにかみながら、おはよう、と小さく返した。

「お兄ちゃん、私昨日はどこまで話したの?」
「面白い動画を見たところまで、聞いたよ」
「うん。そうなの。それがね、」
そして、私が一方的にたくさん話す。
お兄ちゃんに話したいことがたくさんあるのに、ふと強い眠気に襲われる。
私の毛布をかけなおす気配がする。
耳元でそっと、おやすみという声を聞きながら、意識を手放すのであった。

今日は私が話しかけるよりも先に、お兄ちゃんが私の頭をそっと撫でた。
私よりも大きくて硬い手が気持ちよくて、目をつむった。
お兄ちゃんがこんな風に頭を撫でてくれた記憶が脳裏に浮かんだ。

まだ私が小さかった頃だった。
大切な人に指輪を渡すものだと知って、さっそく折り紙で作った穴の大きすぎる指輪をお兄ちゃんに渡した。
お兄ちゃんと結婚するんだもん。
16歳になっても、俺のことを好きでいてくれるのかい?
うん、と強く頷いた私の頭を優しくなでてくれた。

そっと目を開けると、お兄ちゃんは頭に乗せた手を離した。
そして、もう片方の手にあった箱を開けた。
可愛らしい、シンプルな指輪が静かに輝いていた。
呆然とする私の右手をとって、薬指に指輪をはめた。
顔を上げると、お兄ちゃんは笑顔で
「お誕生日おめでとう」

一歩ドアの外に出た。
その一歩はなぜかふむ感覚がなく、深い意識の中へと放り出された。
さようなら、という声が聞こえた気がした。

はっと目を開けると、薄暗い部屋にいた。
右手を確認すると、お兄ちゃんがつけてくれた指輪が薬指にあった。
――夢じゃなかったんだ。
指輪の重みが、夢ではないことを教えてくれた。

そっと指輪に口づけた。
髪の毛が風にあおられた。

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