鬼の目にも慕情

今までは大目に見てきたところもあった。でも、こうも更生が見られないと、いくら任務とはいえ付き合ってられない。
「小澤。お前は私服で来い」
「私服ですか?
わかりました。何か理由があるんですか?」
「お前なら大学生としてでも十分に通用するだろ。
大学に送ったらそのまま張り付いておけ。俺は少し離れたところからバカ息子の動向を確認しておく。絶対に逃がすな」
「そんな極悪人みたいに。
ってか、面倒な仕事押し付けられてませんか、俺」
「文句でもあんのか?」
バカ息子の相手なんかしてられっか。
前回の任務を思い出しただけで虫唾が走る。

前回の任務では、独り暮らしをしてるマンションから全く出てこようとせず、蹴破った玄関から無理やり引きずり出した。
そこからは、酒を飲んだら大学に行くだの、講義を受ける代わりに可愛い女の子のいる店を紹介しろだの散々自分勝手言いやがる始末。
籠城を崩した以上、大学に突き出すのはそう難しい問題ではなかったが、とにかく面倒が付き纏う。

こういうときは、振り回されるのが似合う小澤が適任だろ。
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