コーヒーのお味はいかが?
「ごめんなさい。あの、言いにくいんですけど、名前教えてもらってもいいですか?」

「ヤダって言ったら、どうする?」

「え?」


それは、それでまた困る。


「嘘。桐原湊(みなと)。それが俺の名前」

「湊さん」

「湊で良いよ」


そう言うと、また笑った。

今日の湊は、よく笑う。

さっきから、ことあるごとに笑ってる気がする。


「そうだ。連絡先、教えて」

「あ、はい」


そして、あたし達は連絡先を交換する。

会うのは2回目で、名前も連絡先も知らない関係だったのに、交際することになるなんて、ドラマや漫画の世界みたい。

こんなことが、実際に自分に訪れる日が来るなんて思わなかった。

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