氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。

 登校ラッシュがひいていく。

 生徒はほとんどいなくなった。

 まもなくチャイムが鳴るということを意味する。

「よかったねー。そこにいるよ」
「あんたの虚言に付き合ってる暇ない」
「ほんとにいるんだってー」
「は?」
「ほーら」

 成澤が、わたしをくるりと180度、うしろに回転させる。

 ポンと両肩に手を置かれ、

「ね? 嘘ついてないでしょ」

 そう耳打ちされたとき、アイツと目があった。

「……当麻氷河」

 わたしの前に立つアイツがなにを考えているか、わからない。

 ねえ。

 さっきの、教室でのこと、聞いてた?

 怒ってる?

 わたしのこと……嫌いになった?

「ナリさん」
「おはよ、氷河」
「俺の負けでいいです」
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