氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 そろそろ朝のSHRが始まるので空き教室から出たわたしは、肝心なことを思い出した。

「って、成澤のことなんだけど!!」

 わたしはコイツに古文を教えるために朝から校門の前に立っていたわけじゃない。

「あんたの先輩の」
「あー……。ナリさん」
「昨日の放課後に教室まできて」
「なんでまた」
「あのひとヤバくない?」
「ああ。常人ではないと思ってる」
「わたしに変なこと言ってきて」
「変なことって?」
「それは……」

【氷河落とせたらね】

【ショジョだろ】

「……っ、とにかく変なことは変なこと!!」
「まあ。気にしなくていいんじゃないか。それが、あの人の通常運転だろうから」
「金輪際つきまとうのやめてって言っておいてよ」
「自分で言え」
「言っても無駄だから頼んでるでしょ」

 勉強教えてあげたんだから、そのくらい引き受けてくれてもいいじゃん。

「どうせ自分から近づいたんだろ」
「違う。あっちがいきなり訪ねてきたの」
「そんなこともあるんだな」
「なにが?」
「敢えてあの人の方から近づくことがあるとは知らなかった」
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