氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「……っ」
「ちゃんと、女の子のこと好きになったのは。生まれて初めてだから」

 ズキン、と胸が痛む。

「2人の幸せを願いたいのに。ワガママな気持ちが沸き上がってくる。手に入らないなら、いっそ壊したい――けれど、それは俺の本当の願いではない。壊したあと後悔する。どれだけ自分が未練たらしい男なのかって痛感してるとこ」

 わたしだって、わからない。

 恋の終わらせ方は。

「気持ち悪くて。ごめんね」
「気持ち悪くなんてない。むしろ……」

 いい男だって思う。

 だから、こんなにも動揺してしまう。

「わたし。成澤のこと好き」
「うん」
「最初は人間的にヤバいと思った。クズで。ゲスなのかと」
「はは。間違ってないよ」
「ううん。実は仲間想いで。ちゃんと人のことも好きなれて。誰かのために、自分を……殺すところがあるって知った」
「俺のことは心配いらない。アイスホッケーに打ち込むことで幸せを感じているから」
「ちゃんと。好きだから」
「だけど恋じゃない」
「……うん」
「どうして」
「……っ」
「どうして俺じゃダメなんだろう」

 どうしてアイツがいいんだろう。

「たいして好きじゃないのに。その場の雰囲気で好きだとか言ってきた罰かな」
「……成澤」
「ん?」
「わたし。初恋の人がいたの」
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