氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「じゃあ、スタートダッシュとか。速く滑るためのコツみたいなの教てあげられるんじゃないですか」

 それに、体幹トレーニングも。

 下半身の筋肉を重点的に鍛えるような。

「昔の話ですよ」
「でも。先生だからこそ持ってる知識、ありますよね」
「あったとして。それをこの高校の部員に私が教える義理もありません」

 ……えぇ!?

「技術的な指導者が欲しいのであれば、学校がコーチを呼ぶなり。選手が自分たちで勉強すればいいです」
「冷たい……」
「普通です。言いましたよね、私は雀の涙のような手当てでここにいると」

 時間外労働させてるってことは承知しているが。

「入部届けに私の印鑑が欲しいなら、押してあげますよ。例外的な練習試合を許可しました。だけどそれ以上の責任はないと思っています。こんな時間の練習に付き合う気もありません。今は、顧問としてでなく。ただの男として見学に来たにすぎません」

 だから酒が入った状態でここにいるのか。
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