氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 でもこの部屋を見た瞬間に頭が痛くなりそうでした。

「仕事。持ってきたんですか?」

 ノートパソコンで作業中の先生に近づく。

「別にこれは。仕事ではありません」
「ゲームでもしてるんですか」

 横から覗こうとして

 パタン、と閉じられた。

「健康によくないですよ。あまり長居すると」
「そう思うなら減らしたらどうですか」
「……私はかまわないので」
「なにがですか」
「いつ死んでもいい人生ですから」

 なに、それ。

 冗談キツイ。

「……フジオって」
「呼び捨てですか」
「普段からそんな話し方なの?」

 丁寧なようで

「そうですね。基本的には」

 壁を作っているようにも思える。

 もちろん敬語で話すのは敬意をはらうわけで。

 タメ口になると友だち同士みたいになってしまうわけだが――

「……好きな女の子の前とかでも?」

 読めない。

「それは。私の好いた人だけが知っていたらいい情報です」

 成澤以上に本当の自分を見せない人。
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