氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 テストで出るとこ教えてーーって。

 聞こうとしたのに。

「プリント提出しにきました」
「……そうか、よく来た!」

 井上は、腕に回されたわたしの手を振り払い、逃げるようにソイツのところへ行ってしまう。

 なにこれ。

「ギリギリセーフだな」
「はい」
「もっと余裕持って行動しろよ」

 めっちゃ邪魔されたんだけど。

「纐纈も。明日には出してもらうからな!」

 井上が教室から足早に出ていくと、ポツンとそこに残された。

 そして邪魔者もまた、教室から出ていこうとする。

「ーーちょっと待ってよ!」
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