闇色のシンデレラ

束縛

「空、綺麗……」



久しぶりに帰ってきたマンション。リビングの大きな窓からの眺めに感嘆した。


やっぱりここからの景色は好きだ。



「いいところに建ってるよねこのマンション。
あっちにはスカイツリーが見えるし、こっちには東京タワーが見える。
今のシーズンだとあちこちで花火が上がるし、うん、とっても素敵」

「誰と話してんだ壱華」



と、久々の帰宅にはしゃいでいただけなのに、志勇がいらぬ口を挟んできた。



「志勇しかいないよ」

「ああ、分かってる。分かってっから景色ばっか語ってねえでこっち来い」



言葉を返すと志勇はソファーに仰け反りかえって満足げにニヤリ。


何その反応。まさか「あなたしかいない」ってフレーズが言わせたかっただけ?


なんて心の中でツッコミながら、窓から離れて志勇の隣に腰をかける。



「ちなみにこのマンションな」



志勇はわたしが座ると腰に手を回し、優しく抱き寄せた。





「13階なんてフロアは存在しねえんだ」





「え……?」


13階がない?でも、この部屋は13階だって言ってたのに。


まさか志勇、夏だからって怪談でも語るつもり?
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