独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「あっ……」
「俺のことはいいから」
「ありがとうございます」
樹先生が、私の髪をハンカチで拭ってくれる。
やっぱり優しいな……。
思いがけないゲリラ豪雨のせいで、折角のデートが台なしになってしまい、ヘコんでいた心があっという間に和んだ。
雨粒が大きな音を立てて、フロントガラスに勢いよく打ちつける。
樹先生が車内の空調を暖房に切り替えてくれたけれど、濡れて冷えた体はすぐには温まらない。
指先が小さく震え出し、奥歯がガチガチと音を立てた。
「このままだと風邪引くな。とりあえず、濡れた服を乾かそう」
そう言われても服を乾かす方法など、すぐには思いつかない。
「どうやって?」
「ここに行って」
樹先生がカーナビを操作する。
そこには五つ星ホテルである『横浜プリマホテル』までのルートが表示されていた。