独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「お、お先にどうぞ」
ぎこちなく答える私を、樹先生がクスッと笑った。
「だったら一緒にシャワーを浴びようか?」
「……っ!」
唇の端を上げる樹先生の顔を見たら、からかわれているのだとすぐに気づいた。
こんなときに、変なことを言っておもしろがるなんて悪趣味だ。
唇を尖らせて、樹先生をジロリと睨んだ。
「冗談だよ」
ついさっきまでの意地悪な表情から打って変わり、今は穏やかな笑みを浮かべている。
きっと、ふたりきりの状況を意識している私の緊張を解すために、わざとふざけたことを言ったのだろう。現に樹先生の笑顔を見たら、取り乱していた気持ちがスッと落ち着いた。
「ゆっくり温まっておいで」
「はい。ありがとうございます」
樹先生はどんなときでも私を優先してくれる。
その厚意に甘え、急いでバスルームに向かった。