独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
手術前の混乱
手術を明日に控えた悠太君を励ますために、仕事終わりに小児病棟に向かった。

手術前検診も問題なかったと聞いているし、執刀医は樹さんだからなにも心配ない。

楽観的な気持ちで足を進めていると、廊下を小走りする看護師とすれ違った。

なにかあったのかな……。

慌ただしく去っていく後ろ姿を見つめながら病室を覗く。けれど、そこに悠太君の姿はなかった。

「綾香さん?」

緊迫した雰囲気が漂うなか、小さく声をかけた。

「あっ、華さん! 悠太見なかった?」

綾香さんが切羽詰まった様子で近づいてくる。

「いえ、見てませんけど……。どうしたんですか?」

「ちょっと目を離した隙に、いなくなっちゃったの」

「えっ!」

顔を覆って泣き声をあげる綾香さんを愕然と見つめた。

だから、あんなに慌てていたんだ……。

すれ違った看護師の様子を思い出し、焦燥感に駆られた。

どこになにがあるか把握してない私が、病棟内をやみくもに捜し回っても時間の無駄だ。

「私、外を捜してきます! 綾香さん、きっとすぐに見つかりますよ」

「ありがとう」

涙を流す綾香さんを励ますようにうなずくと、病室を飛び出した。

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