独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
加藤君がフッと笑う。その横顔はとても寂しげで、傷つけたことを自覚した。
「あ、変に意識しなくていいから。これからも同期として接してくれよ。な?」
黙り込んだままの私を気遣うように、加藤君が明るく話す。
思いに応えられないのが、こんなにつらいなんて……。
初めて知った感情に戸惑い、そして胸が痛んだ。けれど、いつまでも気落ちしたままでは心配かけてしまう。
「うん。わかった」
「サンキュ。じゃあ、俺、帰るから」
「うん」
この先も同期という関係でいられることをありがたく思いながら、無理に笑顔を作った。
「桐島先生、白石のこと幸せにしてあげてください」
「うん。約束する」
加藤君が納得したようにうなずき、駅に向かって歩き出した。
「華はいい同期をもって、幸せだね」
「はい」
樹さんの言う通りだ……。
心の中でありがとうとつぶやき、加藤君の姿が見えなくなるまで見送った。