独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「で? 話ってなに?」
サラダを取り分けていると、美咲に尋ねられる。
「えっと……。樹先生のことなんだけど……」
過去にフラれていることも、それでもあきらめきれずにいることも、美咲は知っている。
「まだ樹先生のことが好きなの? ねえ、華。いつまでも報われない恋にしがみついてても虚しいだけでしょ? いい加減、新しい恋に踏み出しなよ」
美咲があきれたようにため息をついた。
新しい恋と言われても、樹先生のことしか好きになれないのだから仕方がない……。
大学三年生のとき、飲み会で知り合った江藤さんから付き合ってほしいと言われたことがある。
樹先生への思いを断ち切るいいチャンスかもしれないと考えた私は、その告白を受け入れようとした。けれど雑誌の読者モデルの経験があると言っていたイケメンの江藤さんを見ても、ちっとも胸がときめかない。
そもそも樹先生を忘れるために、好きでもない人と付き合おうという理由が不純だし、江藤さんにも失礼だ……。
自己中心的な自分に失望しながら、江藤さんに頭を下げた苦い記憶がよみがえった。