アンバランスな愛情

私の保健室

「はい
小泉、お金」

順子が瑛ちゃんのジュース代をせがんだ

放課後の保健室では
毎日目にする光景だ

「呼び捨てかよ!」
瑛ちゃんはズボンのポケットから
小銭入れを出す

「2年になったから
いいんだよ」

「どういう理由だよ
意味、わかんねえし

俺、保健医で
井上より偉いんですけど?」

「全然、偉くないしぃ」

「お前のジュース代はない」

「大人気ない人がここにいまーす」

順子が大きな声で公表する

「でもさ
小泉って他の先生たちより
先生らしいよね」

「失礼な言い方だな
それに今頃
おだてても
井上のジュース代は出さん」

「あ~
本当に大人気ないんですけどぉ」

順子は不満そうに頬を膨らませる

瑛ちゃんは笑いながら
仕方なさそうに
小銭をまた順子の上に落とした

「さすが!

小泉が担任だったら
良かったな~」

「やだよ
俺、そういうの嫌い」

「そうそう
そういう反応が担任にも欲しいよね

ノリが良くて
呼び捨てにしても
バシッと返事をくれる先生って
なかなかいないんだよ」

「お前、他の先生も呼び捨てなのかよ」

「いつでも相談しにきていいぞ
とか
教師と生徒は信頼関係が大切だ
なんて
よく口にしているけど

信頼関係を拒否しているのは
教師たちだと思う!」

「うわ
出たよ
自分勝手な言い分」

瑛ちゃんは苦笑いしている
< 10 / 134 >

この作品をシェア

pagetop