舞い踊る炎使い
「……ううん。違う……燐くんは、ちゃんとカバンに入れて、分からないようにしてたんだよね?」

「あぁ」

「だったら、その盗んだ子は、カバンを漁って盗んだってこと。燐くんが、自分を責める必要は無い」

「……そうか」

俺は、先生に向かって微笑んだ。先生に話したことで、少しは軽くなったような気がする。

「先生、ありがとね」

俺は保健室を出ると、教室に向かった。



「い……っ!」

授業中、悪霊に斬られた傷がズキリと痛み、俺は思わず手で傷を押さえた。俺は、握っていたチョークを床に落とした。

「不知火くん。大丈夫?」

先生や、俺の他に当てられて解答を書いていたクラスメイトが、心配そうに俺を見る。

「ん、大丈夫……」

俺は痛みに堪えながら、笑顔を作った。最近、悪霊の数が増えてきたような気がする。俺が髪飾りとブレスレットを盗まれたことに、何か関係があるのか……?

「……」

俺は、チョークを拾い上げて解答を書くと席に着く。チラリと将宏の方を見ると、将宏は、プリントに落書きをしていた。

将宏は、カバンに付いていた髪飾りとブレスレットを、わざと渡したはずだ。……だけど、何のために?

そんな疑問が、俺の頭をグルグルと回る。……とりあえず、今は授業に専念しないとな。
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