金の乙女は笑わない


それから二週間

侍女のエイミーとは少しずつ話をすることも増えてきたらしいが、他の人間とは話さず近づかないらしい。

エイミーは相変わらずの主人びいきで「アイリス様がかわいらしすぎて……はーー侍女やっててよかったーー」っと毎日うっとりしながら報告に来ている。

アランが書類に目を通しながら聞いていると「陛下聞いてますか?」エイミーが突然怒り出す。

「毎日同じような報告だからな……」

「毎日同じじゃないです!」

そう言っても人形のイメージが強すぎて、かわいらしい表情の王女が想像できない。

「ああ。お食事を召し上がっている時のアイリス様が最高なんですよ!!」

エイミーの報告を一緒に聞いていたラルが、「陛下アイリス様を夕食に誘ってみてはいかがですか?」と提案した。

「そうだな。では、今日でも大丈夫か?」

エイミーの顔が煌きだす。

「大丈夫です。最高に美しいアイリス様に仕上げます」

そう言うと一目散に走り出して行った。





アイリスは陛下から夕食に誘われ、慌ただしく準備が始まった。

湯浴みをし、髪を梳かし、エイミーが髪をきれいに編みこんでいく。

それが終わると軽く化粧を施し、青の布地に銀糸の刺繍が美しいドレスに着替えた。

準備が終わると「ほう……」っとエイミーの口からため息がもれる。

「アイリス様とっても素敵です!さあ、食事の間へと急ぎましょう」



食事の間の扉が開くと、陛下は椅子に座って待っていた。

頭を下げ部屋の中に入ると、目を見開いている陛下と目が合った。

え……どこか変だったかしら、心配になりエイミーに目を向けると、陛下に親指を立てている。

大丈夫ということかしら?

椅子に座り陛下を見たが、初めて会った時と変わらない冷たい雰囲気を漂わせている。

陛下が従事に合図すると食事が運ばれてきた。

前菜から始まり次々に食事が運ばれ、おいしくいただいていく。

すると、いい匂いにが鼻をくすぐり、胸を高鳴らせていると、メイン料理のお肉が目の前に現れた。

お肉を一口大に切り口に運ぶとジュワーと口の中に肉汁が広がり、ほほが緩む。

思わず頬をおさえフーとため息をつくと、周りの空気がおかしなことになっていることに気づいた。




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