となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「あのさ…」

 自分の家と言った友里に、わずかな期待をして声をかけた。


「どうしたの?」

 あまり理解できないが、ハウスキーパーと会う事に浮かれている友里が俺の方に目を向けた。


「来週からちょっと忙しくなる。帰りも遅くなるから、先寝てろよ」

 俺は、友里の表情に目を向けながら言った。


「今までも忙しいじゃない。体大丈夫なの?」

 友里は、一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐにいつもの姿に戻った。

 体の事を心配してくれるのは、確かに嬉しい。それだけだって充分なはずなのに、俺は友里が、寂しいとすり寄って来てくれるのでは?と期待していたのだ。


「よくある事だ……」

 思わず声のトーンが下がる。



 しかし友里は、


「うん。分かった。私も友達とご飯食べに行ってくるね」


と、俺に笑顔を向けたのだ。


 確かに、無理矢理ここへ連れてきた。
 友里にとって俺は、まだ、そばにいて欲しい…… 寂しいと思える存在じゃないんだと思うと、寂しさと焦りがこみ上げてきた。


 友里を離したくない…… 全てを俺のものにしたい……

 そんな気持ちをコントロール出来ないまま、その夜俺は友里を何度も抱いた。
 




 
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