となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 熱が冷めると、ベッドから逃げるように飛び出た友里は口をきいてくれない。


「なあ、そんなに怒る事はないだろう?」

 多少は悪かったと思っているが、俺の心情も分かって欲しい……


「わるかったよ…… だけどこればっかりはしょうがないだろう? 一週間だぞ、一週間! 友里に触れてないんだぞ! あんな色っぽい寝顔見せられたら、無理なんだよ……」


 俺は、愛を込めて友里を見つめた。


「だからって、寝てるうちになんて酷いよ…… せめて、起こせばいいじゃない!」


 友里は、今にも泣きそうに俺を睨んだ。

 そんなに、嫌なのかよ…… 



「じゃぁ起こせば『いい』って言ったのかよ?」


「それは……」

 友里は俯いた。結局嫌なのかよ……



「だろ? いいじゃねえか、友里も気持ち良かっただろ?」

 俺ばかりが友里を好きなのかと思うと、そんな言葉が出てしまった。でも、本当の事だ。


「ばかーーーー!」


 友里は、真っ赤な顔をして大きな声で叫ぶと、席をたってしまった。



 はあ……

 友里の後ろ姿にため息が漏れた。


 すると、友里が振り向いた。

「あ、そうだ…… 今夜遅くなるから、先に寝てて」


「おい、なんだよそれ」

 なんの事だか理解出来ず、パニックだ。



「今夜、会社で送別会があるのよ!」


「そんな事聞いてないぞ!」

 思わず声が荒くなった。
 男も一緒なのか? 遅くって何時だよ。俺より遅いのか?


「言ってませんから。 言う時間もなかったじゃない!」

 友里は、バタンと玄関のドアを閉めて、消えていった……


 どういう事だ?

 友里を本気で怒らせてしまったような気がする……  どうしよう……




 
< 105 / 125 >

この作品をシェア

pagetop