世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
初めて名前を呼ばれた空木は「おぉ~」と言ってなぜか拍手。そんなに感動したのだろうか。
空木の隣にいる久我は手を掴んで、空木が拍手するのを制す。
そしてやっと止まる拍手。静かになったところで、再び詩優が空木さんに声をかけようとしたら
「…全部、玲央から聞きました」
と言った空木さん。
私たちに背を向けているから表情はわからないが、なんだかすごく悲しそうな声。
いつもの元気な空木さんではない。
「私、詩優先輩が『住む世界が違う』って言ったこと……軽く考えてました。
まさか、あんなことになるなんて思ってなくて…」
空木さんの声は震えていて。
くるりと後ろを向いて私たちを見た彼女は涙目になっていた。
それからぺこりと頭を下げ、
「…ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
と謝る。
地面をぽたりと濡らした雫。
空木さんの涙、だろう。
それを見た詩優は口を開いて。
「…俺も、こんなことになるくらいならちゃんと言っておくべきだった。怖い思いさせてごめん」
優しい声で空木さんに声をかけた。