世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ





「妃芽は無事だ。だからその傷だらけの体で動くな」




竜二はそう言って、俺の肩を後ろに押すとベッドに戻す。




“妃芽は無事”
確かに竜二はそう言った。




ほっとひと安心。
でも、なんで榊は言うのを躊躇ったのか。普通に言えばいいものを。




「妃芽は今、2人が落ちた橋に行っていてな。詩優からもらったペアリングを探してる。

これを伝えたら詩優はその傷ですぐ動くと思って榊は伝えるのを躊躇ったんだろう」




知りたかったことを教えてくれる竜二。




…ペアリング。
あれはか関根が橋の上で投げ捨てたんだよな。それを探しに行ってるのか……。





「…竜二、頼みがあるんだけど」




そう声をかけたら、ため息をつかれた。
竜二とは長い付き合いだし、俺の言いたいことがわかったんだろう。




「……妃芽のことを伝えても伝えなくても、詩優…お前は『そこに連れてけ』って言うんだろう」





竜二の言ったことは正解だった。
『花莉のところに連れてって』って頼みたかったから。



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