溺愛の価値、初恋の値段
プロローグ
子どもの頃から、わたしは料理をするのが好きだった。

きっかけは、働くお母さんを手伝いたい――なんていう真面目な思いからではなく、自分が好きなものを食べたいと思ったから。

誰かに食べてもらいたいなんて、思ってもいなかった。

そんなわたしが、初めて他人に手料理を振る舞うことになったのは、中学二年生の時。

メニューは、オムライス。

「美味しい」と言ってもらえたのが思いのほかうれしくて、「また作って」と言われて頷いた。

それ以来、金曜日は「オムライス」の日になった。

あの日まで――。

わたしが、三百万円と引き換えに、初恋を売ってしまうまで――。

< 1 / 175 >

この作品をシェア

pagetop