溺愛の価値、初恋の値段
水曜日の映画


「……海音」



軽く身体を揺さぶられ、眠りから浮上する。

でも、心地よいぬくもりを手放したくない。
起きたくないと思ってしまう。


「海音っ! 起きてっ!」


耳元で叫ばれて、ようやく重いまぶたを引き上げた。


「ん……?」


わたしを見下ろしているのは……飛鷹くんだった。

昨夜のことを思い出し、とても顔を合わせられないと再び毛布に潜り込もうとして、阻止される。


「起きるんだよっ! そろそろロメオたちが来る」

「ロメオ、さん?」

「そう。ほらっ!」


手を引かれ、起き上がった。

身体がだるくて、あちこちギシギシいっている。


(うう、辛い……)


のそのそとベッドから下りようとして、目を見開く。


(わ、わたし、裸……っ!)


「朝からいい眺めだけど、時間ないから」

「ひ、だっ!」


ひょいと軽くわたしを抱き上げた飛鷹くんも、上半身裸だった。
おそらく、下も。


「飛鷹くんて……裸族?」


そう訊ねれば、冷ややかなまなざしで射貫かれた。

飛鷹くんは、わたしをバスルームへ運び込むとお湯を張った湯船に沈め、シャワーを浴び始める。

広い背中や長い足、引き締まったお尻。


(男の人の身体って……きれい)


恥じらって目を逸らすどころか、凝視してしまった。


「さっきから、視線が気になってしかたないんだけど?」


見惚れていると振り返りざまに睨まれる。


「ご、ゴメンナサイ……」


お湯に浸かったおかげで、強張っていた身体は解れ、飛鷹くんと入れ替わりでシャワーを使うことに。

なぜか、ボディタオルを手にしているのは飛鷹くんだ。


「自分で洗えるんだけど……?」

「これも、ごほうびの一環だから」

「…………」


そうしてわたしは、とても口では説明できないような目に遭った。

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