キミ観察日記
 少年は、感じた。

「……眩しい」

 この家は、こんなに明るかったのかと。

「お前を先生がここに置いている理由。なんとなくわかったよ」
「オッサンにわかるものか」
「わかるさ。世話になってるんだろう?」
「半分正解」

 ーー半分正解

「もう半分は、違うというのか?」
「そうさ」
「なにが違う」
「そんなの。先生がオレに世話になってるからに決まってる」

 与一には、少年の言葉が理解できない。

 男に、こんな小さな子供の手を借りる必要性なんて感じないからだ。

「ここの管理でも頼まれているのか」

 普段近づいていない割に掃除が行き届いている理由がそれというなら納得もできる。

「ある意味管理かな」
「ハッキリ言えよ」
「言えるわけないだろ。センセイから聞かされてないってことは、オレから話していいことでもないだろうしな」

 与一は、苛立ちを覚えた。

 自分が信頼し慕う男には、自分の知らない秘密がある。

 それを目の前の少年は知っている。

「どうした。オッサン」
「……紅花、待たせたな。仕上げをしてやる」

 自分より幼い少年を相手になにを考えているのだろう。

 そう思い改めると、与一は、少女の歯を磨いてやった。
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