キミ観察日記
「あの子は風呂に入れましたか」
「いや。さすがに。女の子ですし」
「明日は入れてあげてください」
「ええ? 僕が?」
「不潔じゃないですか。まだ一人じゃ頭を綺麗に洗えないでしょうから」
「……わかりました」

 与一は、渋々返事をする。

「人と水の扱いには、くれぐれも注意してくださいね。それから。誤飲にも気をつけてやって下さい」
「はい」
「頼みましたよ、与一くん」

 男は与一から手を離そうとはしない。

「あの。まだ話が?」
「もうひとつだけ。大事なことを言い忘れていたのですが」
「はい」
「住み込みでお願いします」

 本当はわざとなんじゃないか、このひと。

「あの子の服と一緒に。君の服も用意してありますので、ご心配なく」

 重要なことほど後だしして、僕の反応を愉しんでいるんじゃないかとそう強く感じたが、与一は、やはり呑み込むしかなかった。

「さて。晩酌の相手でもしてもらいましょうかね」
「えっ。あの……先生。僕は酒は――」
「君はオレンジジュースで乾杯しましょうね」
「……ハイ」
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