キミ観察日記
 男は、白の仮面をつけている。
 表情こそ確認できないが口調は穏やかなものだった。

 背が高く細身で、タイトな黒のタートルネックニットとズボンを着用し、白衣を羽織っている。

 男は、少女に語り続けた。

「なんでも繰り返せばいいと言うものではない、と父はおっしゃっていました。

そこに関しましては、私も父と同意見です。

とうに読み書きできる漢字をノートに綴れば、時間も労力も、ノートもえんぴつも無駄になりますからね。

習った漢字の中から苦手なものを選び復習する――或いは新しい漢字を覚えていく方がよほど建設的と言えるでしょう。

皆が同じ速度で同じことをする訓練を続けることに、なんの価値があるのでしょう。

全教科テストで平均点をとる人間を育てることに、なんの意味があるのでしょう。
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