にじいろの向こう側
晴れやかな朝にかかる少しの雲






…眩しい。



柔らかいカーテンの隙間から入って来る光と鳥の鳴き声。それに混じる、スマホのアラーム音…

アラーム…音…止めないと…


体を動かそうと、目を開けた瞬間に、そのまま固まった。


可愛い寝顔がすぐ目の前に一つ。


瑞稀様に勢い余って告白して、智樹さんの事も話せて…。瑞稀様は『これからも会いに行けば?』と言ってくれた。その後、その包んでくれる温かさと触れてくれる甘さに溺れて……


……気が付いたら朝。


「………。」


爽やかな小鳥達のさえずりとは裏腹に私の血の気がどんどん引いて行く。


ご、ご主人様のベッドにお泊まりするなんて…薮さんに見つかったら私、クビなのでは。


「あ、あの…瑞稀様。」


少し体を離す様に肩を押したら、背中に回されてる腕に力が籠る。

「今日は10時に出掛けるって言ったでしょ。もう少し寝かせてよ。」

「は、はい。瑞稀様はこのままゆっくりとお休みになって頂いて…。わ、私は自室に戻ろうかと…」
「……やだ。オヤスミナサイ。」

瑞稀様はより強く私の身体を引き寄せ、そのまままた寝息を立て始める。


「わ、私…その、朝の掃除に行かなくてはなりませんので。」
「ああ…そうなんだ。」


それに反応して、けだるそうに少しもぞもぞと動いて離れてくれる。


良かった…分かってくれた。

と思ったら、今度は腰にくるりと腕が巻かれて引き寄せられた。

おでこ同士をコツンとつけられて、ぶつかった視線。眠そうなトロンとしたその目が優しく煌めきを放つ。


「主人命令。今日は掃除を休んで下さい。」
「?!」

い、いやいや!無理です!
そんな命令しないで!


可愛い寝起き顔に流され、「かしこまりました」と納得しそうになって、すんでのところで踏みとどまった。


「だ、だめです…。」
「主人の言うこときけや。」
「聡明なご主人様はそんな命令はなさいません!」
「うっさい。」


ゴロンと体を動かし、私を上から見下ろす瑞稀様。煌めく瞳をそのままに柔らかく微笑む。


「……俺のだもん。」


ふわりとキスが降って来た。


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