にじいろの向こう側
出来れば、隣で。







桜の季節が通り過ぎて

涼太さんが整備してる庭も方々に新緑を纏って緑色が増して来た連休明け。


瑞稀様のお食事の指導を受ける様になって2ヶ月近く


「咲月、来週頭、夕飯外で食おっか。」


突然瑞稀様からそんなお言葉を頂いた。



強く鼓動が跳ねて、思わず持っていたジャケットを持つ手に力が入る。



ゴクリと喉をならしたら、瑞稀様が面白そうに眉を下げて口元を腕で隠した。


「そんなにあからさまに固まる?」

「い、いえ…あの…け、圭介さんにお休みの確認を…。」

「あ、それはもう俺がしといた。」


ネクタイを外しながら笑ってる瑞稀様にトクン、トクンと心音が跳ねる。


「…どうした?」

「す、すみません。何か…夢みたいで。」

「何で俺と外食すんのが夢なんだよ。」


だって…嬉しいから。

ハハッて楽しそうに笑う声に私も笑みを返す。


頑張って良かった…。
いや、私というよりは、テーブルマナーを辛抱強く教えてくださった瑞稀様が頑張ってくださったおかげだよね。


「瑞稀様…本当にありがとうございます。」


私の言葉に、動きを止めた瑞稀様の琥珀色の瞳が少し揺らめいた。


「あ、あの…?」


小首を傾げたら、また優しい笑みに戻って



「いや?咲月がえらい喜び様だからさ」


シュシュに付いたチャームを「ズレてるよ」と直す瑞稀様の表情。
寂しさを纏ってる気がして少しだけ違和感を抱いた。


「あの…お忙しい様でしたら無理をしなくても…。」

「ん?全然忙しくはないけど」

「そんな事はあり得ません。」


真面目に答えた私にまた面白そうに笑う瑞稀様。


今度はいつもの瑞稀様だな…


「咲月、俺が食事が楽しくなる様な格好を期待してます。」

「…???」

「屈んだら胸の谷間が見えるとか?」


「っ…瑞稀様…。」


私を抱き寄せて重ねてくれた唇もいつも通り優しい。


…気のせい、かな。


頭がぼんやりして来る中で、ひっかかりをそのままに、深くなるそれに酔いしれた。




< 98 / 146 >

この作品をシェア

pagetop