沈黙の歌姫



ツーっと伝った涙が枕に跡をつける。

お母さんの夢なんて久々に見たな…。


私のお母さんは7年前私が小学校4年生だった夏に病気で亡くなってしまった…。





今はお父さんと二人暮らし。とは言ってもあんな人のこともうお父さんだなんて思えない。



お母さんが亡くなって、お父さんは変わった。


前は家族思いで優しかったのに…



母が亡くなったあとの深い悲しみに満ちた瞳。



火葬が終わり、遺骨になった母を見たその瞳は、優しい父のものでも、悲しみに満ちたものでも無くなっていた。



それからと言うもの、毎日のように床に転がる大量のお酒の缶。

酔っ払った暴力を振るわれる日々。


生きる理由なんてなんにもない。

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