触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜




言ってしまった。
可能性は低いけど真っ向から来てくれる桜井さんの姿勢がただただ有り難くて。
そう思う俺はズルいのかな。
隣で素直に喜んでくれてる姿を見ると申し訳ない気持ちとは裏腹に、奈那に対する想いは募る一方だった。




どっちにしても俺が一番最低なんじゃないか。




俺を好きだと言ってくれる桜井さんは、奈那が好きだとわかった上で奈那を揺さぶる作戦までかって出てくれて。
何も変わらなければ俺が奈那を諦めて桜井さんと付き合う。
もし奈那が俺を好きだと言ったら桜井さんは身を引くとまで。




いくら何でも桜井さんが不憫だ。
こんなの絶対良くない…!!




「あ、あのさ…!やっぱり止めない!?」




駅前を歩いてるところで立ち止まり組んでいた手を掴んだ。




「え、何を…?」




「作戦とか……そういう類い全部。本当、今のままで充分良いんだ、一緒に居れるだけで幸せだしそれ以上求めたらバチが当たるって言うか…」




掴んでいた手をスッと引かれ目の前にあったCDショップに入ってく。
適当に視聴コーナーの前で止まる。




「戦う前に逃げるんだ?」




目も見ず操作しながらそう言われた。




「怖いんだ……どうしようもなく好きな相手に拒まれたら生きていけない」




「ふーん、そんなに苦しい顔するほど好きなんだね?」




「うん……だからごめんなさい」




「は?勝手に2回フルな」




「色々考えてくれてありがとう」




1つのヘッドホンで一緒に音楽を聴く。
今一番流行ってるフォークデュオの歌。
失恋ソングだけど悲しみだけじゃなく讃え合う……視点を変えれば応援ソングにもなる歌だ。
まさにタイムリーな選曲。
黙って聴いた。







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