私たちの春は白
「ここはどこ?私の家じゃないわ」

「おばあちゃんの家はもうないの。でも、おばあちゃんはここに住んでいたのよ」

「知らないわ、こんなところ」

おばあちゃんは、やっぱり忘れてしまっている。それが仕方ないとわかっていても、悲しくてたまらない。

「とりあえず、せっかくこんな遠出をしたんだから遊んで帰ろう」

お父さんの提案に賛成!私たちはお昼ご飯を食べに食堂へと入る。小さい頃、よくここに食べに来たっけ。

「あれ?葵ちゃんじゃない!懐かしい〜」

「えっ!?もしかして、雪ちゃん?」

この町に来るたびに一緒に遊んでいた雪ちゃんが食堂でバイトをしていた。会うのは何年ぶりだろう。私は嬉しくなる。

「久しぶりだね!元気にしてた?」

「見ての通り、進学に向けてお金を貯めてるとこ。こんな田舎出て都会で優雅に暮らしてやるんだ!!葵ちゃんは?」

「えっと、私はねーーー」

「雪ちゃん、午後はもう帰っていいから今は仕事してちょうだい!」

お喋りに花を咲かせる私たちを見て、食堂のおばちゃんが苦笑する。
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