たとえば、こんな人生も
8
家に戻って1週間が過ぎた

家に戻った翌日に帰ってきたあの人と出くわしたけど
何も言われず、何もされなかった
向けられたのは無関心な冷たい視線のみ

今のところは平穏無事に過ごしてる


オーナーや姉さん、いつきさんは
かなり心配してくれて
毎日、誰かしらからメールや電話がかかってくる



当たり前だけど
一緒に暮らしてた時より、いつきさんと話す機会は減った

最近は特に

外回りの仕事が多いみたいで、お店ではあまり見かけない

まあ、それを除いても
もともとお店で頻繁に顔を合わせたりもなかったから


だけど


「あ、いた。ひたなちゃん」

「いつきさん」


掃除用具の片付けをしていると
余所行き姿のいつきさんが現れた


「今から出かけるんですか?」

「うん。他店の視察」

「お疲れ様です」

「これ、作ったから家で食べて」

「…この前も貰ったのに」

「俺が好きでやってることだから
迷惑じゃないなら受け取って」


差し出された袋には
小さめのタッパーが何個か入ってる

中身はいつきさんお手製のお惣菜
< 140 / 177 >

この作品をシェア

pagetop