たとえば、こんな人生も
……お客さん、なわけないし…

正面入口の鍵はまだ閉まってるから
間違って入ってきたりしない



「あの…」

「……」

「もしもーし」

「……」



声をかけても全然起きない



…うーん……とりあえず…



部屋の受話器を手に取る


少しして


『……あー。今取り込み中なんだけど』


めんどくさそうな声が受話器越しに響く


「シン君
あの、お姫さまのお部屋にね
なんか男の人が寝てるんだけど」

『男?店、まだ開けてねーけど』

「なんかね、気持ち良さそうに寝てる
どうしたらいいかな?」

『不法侵入じゃね?とりあえず縛っとけ』

「分かった」


投げやりなシン君の言葉に
私は素直に頷いて受話器を戻した


縄の代わりになりそうなものを適当に見繕って

そして

その人の両手を拘束した
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