たとえば、こんな人生も
3
「はい、どーぞ」

「…お邪魔します」



…………広い



連れてこられたのは高級マンションの最上階

その一室


エントランスも
エレベーターも
廊下もなにもかも

ぴかぴかでふかふかできらきらで

広々としてて

とにかく高そうだったけど



部屋の中もすごかった


大理石の床

海外の高級ブランドの家具や家電

全面ガラス張りの広々としたリビング

使い勝手の良さそうな最新型のキッチン


テレビとかでよく見る感じの
おしゃれな空間が広がっていて



「……高そう」

「家賃はそこそこするね。
でも、家具とか置いてるものとか
ほとんど貰い物だよ」


思わず口からこぼした言葉に
いつきさんは笑って
持ってきた私の荷物をソファーの上に置いた


「俺は基本的に物とか服とか買わないから」

「そうなんですか?」


意外

ブランドものの服とか時計とか
いっぱい持ってるイメージだった



「うん。必要最低限。
正直、部屋とかもこんな広くなくていいんだけどね」


「もともと小さなアパートの6畳くらいの部屋で暮らしてたんだけど」


「入居者がいないから入ってくれないかって
頼まれて、今ここに住んでる感じ」


「このマンション、昔お世話になった人が
管理人なんだ
だから、家賃も俺は格安にしてもらえてる」
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