たとえば、こんな人生も
「姫達、ひなたちゃんの取り合いだったね」

「あはは…」


いつきさんのそんな言葉に私は乾いた笑い声を返す

袋に食材を詰め終えると
いつきさんが「貸して」と私から袋を奪う


「軽いから大丈夫ですよ」

「いーの。ほら、帰ろう」



スーパーを後にしていつきさんの家に向かう

外は真っ暗

人もほとんど歩いてない



「24時間やってるスーパーって便利ですね」

「そうだね。重宝してる」



姉さん達と同じでいつきさんは
大体夜出勤、朝方帰宅

だけど今日は久しぶりのバイトの私を気にして、私に時間を合わせてくれた


ちょうど食材も使い切ってしまってたからと
帰り道のスーパーでふたりで買い出し




「いつきさんは昔から料理、得意だったんですか?」

「いや、ものすごく苦手だった」

「苦手だったのに
あんなに上手に作れるようになったんですか」

「必要に迫られてやる内にね
段々慣れてくるもんだよ」

「やっぱり一人暮らしとか始めると
自炊、意識しますか?」

「ううん。そうじゃない
母親が病気持ちだったからさ
やらなきゃいけなかったんだよ
小さな頃から家事諸々」
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