白雪姫に極甘な毒リンゴを
ムササビになった気分で癒されていると、
教室に七星くんが入ってきた。
隣にはいつものように、
お人形みたいにかわいいクルミちゃんが。
「七星、今度の土曜日だけど、
朝の8時頃行ってもいい?」
「別にいいけど」
砂糖入れすぎの、
甘ったるいミルクティーのような
クルミちゃんの声が、
聞きたくないのに、勝手に耳に入ってくる。
七星くんの家に……
クルミちゃんが行くんだね……
いつも一緒にいるから、
二人は付き合っているのかな?とは
思っていたけど。
実際にデートの約束を聞いちゃうと、
心が両手で握りつぶされたように痛い。
ふと七星くんを見ると、
七星くんが私の瞳を見つめ、
優しく微笑んでくれた。
その微笑みは何?
お願いだから……
期待させないで欲しい……
クルミちゃんが好きなら好きで、
笑いかけたりしないで欲しい。
そうしないと、
七星くんへの思いが膨らんじゃうから。
風船みたいに膨らんで、
いつかはじけちゃうんだから。
私はどうしても、
七星くんに笑い返すことができなくて、
真顔のまま、視線をそっとそらした。