オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
「ありがとうございますっ!」

半ば強引に上京を認めてもらった立場だか

ら、少し焦っていたのかもしれない。

「ももちゃんが望むなら、新メニューだって

一緒に考えるよ?」

冗談混じりに笑いながら話してくれる龍也さ

んに自然と笑みが零れた。

それからいつも通り業務をこなして、バイト

が終わる少し前に蓮人さんがきた。

「いらっしゃいませ!」

蓮人はいつもの席に着いて、私が淹れたコー

ヒーを口に含んだ。

「今日話したいことがあるから、オレの部屋

来てくれる?」

なんだか蓮人らしくない言葉に違和感を抱き

つつ、首を縦に振った。

ふと隣に立つ龍也さんに目を向けると、心配

そうに蓮人を見ていた。

「龍也さん?どうかしました?」

「い、いや。なんでもないよ。」

なんか今日は二人とも様子がおかしいような

気がするけど。

「じゃ、ももちゃん上がっていいよ。」

「はいっ!お疲れ様です!」

龍也さんに挨拶をして、更衣室にむかった。

「蓮人、話すんだな。」

「あぁ。」

蓮人は右手の薬指に光る父親の指輪を見つめ

て。

「きっといつも一緒だから。オレとあいつ

も。」

そう呟く蓮人の瞳は穏やかに笑っていた。

龍也さんに挨拶をしてから私たちはいつもと

違う道を歩いて、蓮人の部屋に向かった。

「ちょっと座ってて。」

蓮人に言われた通り、ソファに腰かける。
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