リペイントオレンジ🍊


「これっぽっちの漢字も読めねぇなら、教師なんて辞めちまえ」

「…………」



くぅ、上手いことやり返せたと思ったのに。
嫌味レベルは菅野さんの方が数倍上手だ。


「とりあえず、訓練の内容が決まり次第、こっちから追って連絡する」

「……はい。あ、あと!講話もお願いしたいんですけど」

「はぁ?避難訓練、来週なんだろ?」

「……はい」

「俺をどんだけ暇人だと思ってんだ?」

「1週間もあるじゃないですか。それに、堀さんは菅野さんが1番仕事が出来るって……」

「堀さんの言うことなんか間にうけんなっつーの」

「じゃあ、いいです。堀さんに頼んできますから」


グダグダと文句ばかり並べて、この上なく嫌そうな顔で私を見下ろす菅野さんは、私の言葉にそれはそれは大きなため息を吐いたあと、諦めにも似た様子で小さく頷いた。


「分かった。やりゃーいいんだろ」


投げやりな感じが癪に障るけど、口にしたらおしまいだってことくらい分かる。


「はは、菅野さんが話のわかる方でよかった」

「思ってもねぇこと貼り付けた笑顔で言うんじゃねぇ」

「……とにかく。全ては子どもたちの安全のためです。為になるお話をお願いしますね」


今は、このどうしようもなく嫌なヤツをなだめておだてて木に登らせておかなければ。
< 22 / 133 >

この作品をシェア

pagetop