リペイントオレンジ🍊

「俺に会いたくてわざとやってるんじゃねぇだろうな?」

「……そ!そんな、悪趣味な」

「ふざけんな、冗談に決まってんだろ」



そんな怖い顔して、そんな面白くない究極の冗談言われたのは生まれて初めてです。


「笑えない冗談やめてくださいよ」


これ以上怖い顔で睨まれたら、もう今度こそチビるって言うのに、菅野さんの同僚たちはヒソヒソと楽しげに私と菅野さんを噂している。


”付き合ってんのかな?”とか、”菅野さんの家に鍵を忘れるくらいだから深い関係なのは間違いない”だとか。


聞かないようにと思っても、勝手に耳に侵入してくる言葉たちは、恐らく菅野さんの耳にも……。



「……ひっ、」


キッと強く睨まれて、小さな悲鳴を漏らせば、間髪入れずにため息も降ってきて、気だるげな「待ってろ」が殺人級の怒気を放っているようにすら感じられた。


自分のカバンの中をガサゴソと漁り、シルバーに輝くそれを手にして、菅野さんはすぐに戻って来ると、簡単に私へと放り投げる。


「わ、ちょ……」
< 51 / 133 >

この作品をシェア

pagetop