リペイントオレンジ🍊


きっと、海穂さんが菅野さんに彼氏のフリをして私を助けるように言ってくれたんだろうな。

いつも……助けられてばかりだ。


「あの、菅野さん。ありがとうございました」

「あぁ。……にしてもあいつ、趣味悪ぃな」

「そうですか?見る目はありますよ」


私の強がりに"よく言うよ"と呆れながら、菅野さんは店の前でタクシーを止めた。


2人で乗り込んで私の家の住所を告げれば、タクシーは迷わず走り出す。



「あの、そう言えば海穂さんは?私なら別に1人で帰れたのに」

「姉貴なら少し前に先に帰った」

「……え?」


静かな車内に響く、2人の声。
窓の外の景色は、藍色に染まって流れていく。


「なんだよ、その顔」


バッと勢いよく菅野さんを見てしまったせいで、菅野さんの眉間にくっきりとシワが寄った。


「私はてっきり……、海穂さんが菅野さんに"彼氏のフリ"を提案してくれたんだとばかり」

「……俺には困ってるように見えが、迷惑だったか?」

「いえ!迷惑なんて……そんな。むしろ、本当に助かりました。だけど、」

「だけど、なんだよ」


ムッとしながら私に視線を向ける菅野さんが、いつもより子どもっぽく見える。
< 73 / 133 >

この作品をシェア

pagetop