愛は惜しみなく与う④



うげぇぇ

と言う情けない声を出す男を、あたしは今、踏みつけている


「あたしの友達の財布盗むとか、ええ根性してんなぁ!」


グイッと腕もしっかり後ろに回し、完璧に取り押さえた


「はぁ、杏、汚いからどけ」


泉にそう言われて、男の上から下りる。汚いってこの人が?凄い悪口やな!

すみませんすみません

そういうが、すみませんでは済みません!
なんちって〜

1人で頭の中でダジャレを言ってると、泉が男を立たせて、響の財布を取り返してくれた。よかったよかった

ほんまは警察とかに言うべきなんやろうけど、なんせ面倒


「あんた、他にも盗ってへんやろな!」

「ひぇぇすみません。とってません」


頭を抱えて震えてしまった
なんでやねん。
こっちが怖がる方やわ

もうしませんから。そう土下座してしまった

響も、もういいよと苦笑い

まぁそうやな


「次こんなんしてるん見かけたら、捕まるよりも、えらいことなんで」


そう脅し文句を伝えてみると、ぴゅーーーーっと逃げていった


なんや、弱いやっちゃな。そんなんやったら盗みなんかせんかったらええのに
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